前回の続き——監視に、どこまで力を注ぐか

前回の続き——監視に、どこまで力を注ぐか

前回のS-05では、異常を検知して人へ知らせる監視・アラート・エスカレーションを設計しました。ではその監視や復旧に、どこまで力を注げばよいのでしょうか。5分ごとの死活監視で十分なのか、夜間も人が待機すべきなのか。その線引きの答えを決めるのが、この講義で扱う可用性の数値目標です。N-09で触れた可用性という言葉を、ここでは運用で実際に使える数字にまで具体化していきます。

このスライドのポイント

  • 前回S-05: 異常を検知して人へ知らせる監視・アラート・エスカレーションを設計した
  • 残る問い: その監視や復旧に、どこまで力を注げばよいのか
  • 答えを決めるのが、この講義で扱う可用性の数値目標
  • N-09で触れた可用性を、運用で使える数字にまで具体化する

定義——可用性・SLO・SLA

定義——可用性・SLO・SLA

可用性とは、サービスが使える時間の割合のことです。数値にすると感覚がつかめます。99%はおよそ年間3.7日の停止、99.9%はおよそ8.8時間、99.99%はおよそ53分の停止に当たります。この目標を自分たちの側で立てるのがSLO、提供目標です。同じ約束でも、利用者や顧客と契約として交わし、破れば補償などが生じるのがSLAです。R-02やR-03で借りているサービスのSLAは、自分のアプリの可用性の上限を決めます。

このスライドのポイント

  • 可用性(N-09の再訪)=サービスが使える時間の割合。数値にすると感覚がつかめる
  • 99%=年間約3.7日停止/99.9%=約8.8時間/99.99%=約53分
  • SLO=自分たちで立てる提供目標(内部の約束)
  • SLA=利用者・顧客との契約上の約束(外部の約束・破ると補償等)
  • 借りているサービス(R-02/R-03)のSLAが、自分のアプリの可用性の上限を決める

なぜ必要か——目標がないと両極端に振れる

なぜ必要か——目標がないと両極端に振れる

数値目標がないと、運用は両極端に振れます。一方は絶対に止めないという不可能な要求で、費用がいくらでも膨らみます。もう一方は目標のない成り行き運用で、止まっていても気づきません。数値目標があって初めて、S-05の監視やR-09のロールバックといった投資を、どこまで行うかの適正量が決まります。数値目標が、投資の適正量を決めるのです。

このスライドのポイント

  • 目標がないと運用は両極端に振れる
  • 一方: 「絶対に止めない」という不可能な要求→費用が無限に膨らむ
  • もう一方: 目標なしの成り行き運用→止まっていても気づかない
  • 数値目標があって初めて、投資(S-05の監視・R-09のロールバック)の適正量が決まる

構造——換算表と、内と外の関係

構造——換算表と、内と外の関係

全体像を2つの図で押さえます。1つは、9の数と停止時間の対応表です。9が1つ増えるほど、許される停止時間は急激に短くなります。もう1つは、SLOとSLAの内と外の関係です。借りているサービスのSLAが最も外側の枠で、その内側に自分たちのSLO、さらに内側に利用者へ実際に示す約束が収まります。借り物の可用性を超える約束は、自分では守れません。

このスライドのポイント

  • 全体像は2つの図で押さえる
  • 1つ: 「9」の数と停止時間の対応表。9が増えるほど許される停止時間は急激に短くなる
  • もう1つ: SLOとSLAの内と外の関係
  • 不等式: 借り物のSLA ≧ 自分のSLO ≧ 利用者への約束
  • 借り物の可用性を超える約束は、自分では守れない

経費アプリのSLO設計

経費アプリのSLO設計

経費アプリで考えます。社内50人が業務時間に使うアプリなので、業務時間内の可用性を99.5%、つまり月に2時間ほどの停止までは許すとSLOを決めます。すると、デプロイは利用の少ない夜間に行えばよく、24時間体制の監視までは要らない、と運用の力の入れ具合が定まります。M-06で書いた可用性の欄が、ここで実際の運用判断になります。

このスライドのポイント

  • 経費アプリ(社内50人・業務時間に利用)で考える
  • 業務時間内の可用性を99.5%(月2時間の停止まで許容)とSLOに決める
  • すると: デプロイは利用の少ない夜間(R-06)でよい・24時間監視は不要
  • 「力の入れ具合」が具体的に定まる
  • M-06で書いた可用性の欄が、ここで実際の運用判断になる

技術サンプル——可用性の換算表

技術サンプル——可用性の換算表

サンプルは可用性の換算表です。目的は、パーセントを停止時間の感覚に翻訳することです。下に経費アプリのSLO記入例も置きました。読み方のポイントは、9が1つ増えるごとに許容できる停止時間がおよそ10分の1になること、そして目標は業務の実態から選ぶことです。AIへの質問例は、このアプリの利用実態に見合うSLOを提案し、利用しているサービスのSLAとの整合も確認してください、です。

このスライドのポイント

  • 種別: table
  • 目的: パーセントを、停止時間の感覚に翻訳する
  • サンプル本体(換算表):

混同しやすい概念——SLO と SLA

混同しやすい概念——SLO と SLA

混同しやすいのがSLOとSLAです。SLOは内部の目標で、破っても補償ではなく次への学びになります。目標に届かなければ、原因を調べて次の運用を良くする材料にします。一方のSLAは外部との契約で、破ると補償などの責任が生じます。約束した水準を守れなければ、金銭や信用の損失につながります。言い換えれば、SLOは内部目標、SLAは外部契約です。個人や社内向けのアプリは、まずSLOだけを持てば十分です。契約としてのSLAが必要になるのは、外部の顧客へ有償で提供する段階からです。

バイブコーディングでの確認点

バイブコーディングでの確認点

可用性を上げたいという要望を受けたら、3つの問いで応じます。今は何パーセントか、目標は何パーセントか、その差を埋めるためにどれだけの手間や費用を払うか、です。これはN-09とN-10で学んだ、比較と割り切りの実践そのものです。青天井の要求を、払える範囲の目標へと着地させる問いかけだと考えてください。

このスライドのポイント

  • 「可用性を上げたい」という要望には、3つの問いで応じる
  • ①今は何パーセントか ②目標は何パーセントか ③その差を埋めるためにどれだけ払うか
  • これはN-09(比較)とN-10(割り切り)の実践そのもの
  • AIへの質問例: 「現状の可用性の測り方と、目標を99.9%に上げた場合に増える作業を挙げてください」

まとめと次回

まとめと次回

一問一答です。99.9%の可用性は、年間およそ何時間の停止でしょうか。……答えは、およそ8.8時間です。30秒のまとめです。可用性は使える時間の割合を数値にしたもの、SLOは内部目標、SLAは外部契約であり、数値目標が投資の適正量を決めます。次回のS-07では、利用者が肌で感じる表示速度の指標を扱います。関連資料は、アプリ運用チェックリストと、AIアプリの費用対効果シートです。

このスライドのポイント

  • 一問一答:「99.9%の可用性は年間およそ何時間の停止か?」→ 約8.8時間
  • 30秒まとめ: 可用性は使える時間の割合の数値/SLOは内部目標・SLAは外部契約/数値目標が投資の適正量を決める
  • 次回S-07: 利用者が肌で感じる表示速度の指標へ
  • 関連資料: 「アプリ運用チェックリスト」「AIアプリの費用対効果シート」