前回の分担から、相棒の中身へ

前回のA-04では、バイブコーディングにおける人間とAIの分担を決めました。目的設定や差分の確認といった判断は人間が持ち、コードの生成はAIが担う、という線引きです。この講義では、その相棒であるAIの中身を開けてみます。すべてを詳しく知る必要はなく、出力を正しく判断するために必要な深さだけを押さえます。
このスライドのポイント
- A-04: 人間とAIの分担を決めた(判断は人間、生成はAI)
- この講義: 相棒であるAIの中身を、判断に必要な深さだけ開ける
LLMとは何か

コードを生成するAIの中心にあるのがLLM、大規模言語モデルと呼ばれる仕組みです。LLMは、大量の文章やコードといった学習データからパターンを学び、入力された文の続きとして最もそれらしいトークンを、1つずつ順番に選んで出力します。トークンとは、文字列を扱いやすく区切った断片のことです。ここで大切なのは、LLMが行っているのは検索でも実行でもなく、あくまで続きを組み立てる「生成」だという点です。答えを保存された場所から取り出しているわけではありません。
このスライドのポイント
- LLM(大規模言語モデル): 学習データからパターンを学び、続きとして最もそれらしいトークンを1つずつ選んで出力する仕組み
- 学習データ: 大量の文章やコード
- トークン: 文字列を扱いやすく区切った断片
- 行っているのは検索でも実行でもなく「生成」
なぜこの仕組みを知る必要があるか

この仕組みを知らないと、「AIが言うのだから正しい」と受け取ってしまいがちです。しかし、それらしく見えることと、実際に正しいことは別物です。LLMは、もっともらしい続きを選ぶことには長けていても、その内容が事実かどうかを保証する仕組みを内側に持っていません。だからこそ、A-04で見たとおり、テストや差分の確認といった人間の工程を省くことはできません。
このスライドのポイント
- 「AIが言うから正しい」は誤解
- それらしさと正しさは別物
- LLMは内側に「正しさを保証する仕組み」を持たない
- だから確認工程(テスト・差分)は省けない
生成の流れに検証は含まれない

全体の流れを図で追ってみます。まず学習データからパターンが作られ、そこへ利用者の入力、つまりプロンプトが渡されます。すると、その続きとして次のトークンが順番に選ばれ、つながって出力になります。注目してほしいのは、この一方向の流れのどこにも「正しさを検証する」段階が入っていないことです。検証は仕組みの外側、つまり人間の側にしかありません。
このスライドのポイント
- 流れ: 学習データ → パターン → 入力(プロンプト)→ 次のトークンを順に選ぶ → 出力
- この一方向の流れのどこにも「正しさの検証」が無い
- 検証は仕組みの外側、人間の側にしかない
コードを頼んだときに起きていること

具体例で考えます。「合計を計算する関数を書いて」と頼むと、AIは学習した無数の類似コードのパターンから、それらしい形を組み立てて返します。多くの場合ちゃんと動くのは、学習したパターンの精度が高いからです。ここを誤解しないでください。動くことが多いのは確率の高さであって、正しさが保証されているからではありません。同じ依頼でも、状況によっては動かない形が返ることもあり得ます。
このスライドのポイント
- 「合計を計算する関数を書いて」→ 学習した類似コードのパターンから、それらしい形を組み立てる
- 動くことが多い理由: パターンの精度が高いから
- 保証があるからではない。動かない形が返ることもあり得る
技術サンプル: 同じ依頼を2回試す

サンプルで確かめてみましょう。種別はプロンプトです。同じ依頼を2回送り、返ってくる答えを見比べる実験です。「1から10の合計を返す関数をJavaScriptで」と2回頼むと、どちらも動く一方で、書き方が微妙に違うことがあります。読み方のポイントは、両方とも正しく動く場合がある点と、それでも書き方が揺れる点です。AIには「この2つの答えの違いと、どちらを採用すべきかの理由を説明してください」と聞いてみましょう。
検索エンジンと生成AIは違う

よく混同されるのが、検索エンジンと生成AIの違いです。検索エンジンは、すでに存在する実在のページを探し出して返します。一方、生成AIはその場で新しく文字列を組み立てて返します。この違いは本質的で、検索には元となる出典がありますが、生成された文章やコードには、そのままの出典が存在しないことがあります。だから、生成物の裏付けは自分で確かめる必要があります。
バイブコーディングでの確認点

AIを使うときは、答えを2種類に区別して受け取ると安全です。1つは、学習パターン由来の一般論。もう1つは、この場で実際に確認された事実です。この2つは見た目が同じでも、信頼度が違います。たとえば書き方を提案されたら、「この書き方が現在も推奨されている根拠はありますか」と聞き、一般論なのか裏付けのある事実なのかを切り分けます。
このスライドのポイント
- 答えを2種類に区別して受け取る: ①学習パターン由来の一般論 ②この場で確認された事実
- 見た目が同じでも信頼度は違う
- 質問例:「この書き方が現在も推奨されている根拠はありますか」
まとめと次回への橋渡し

最後に一問一答です。AIの出力が毎回同じとは限らないのはなぜでしょうか。答えは、保存された正解を取り出しているのではなく、その場でそれらしいトークンを選んで生成しているからです。30秒でまとめます。LLMは学習データのパターンから続きを生成する仕組みで、正しさそのものは保証しません。だから、確認は人間の仕事として残ります。次回のA-06では、この性質がなぜ「もっともらしい間違い」を生むのかを分類して見ていきます。関連資料は「AIモデル・AIツール比較マップ」と「AI開発ツール比較表」です。
このスライドのポイント
- 一問一答: AIの出力が毎回同じとは限らないのはなぜ? → その場でそれらしいトークンを選んで生成しているから
- 30秒まとめ: LLMは学習データのパターンから続きを生成する。正しさは保証しない。だから確認は人間の仕事
- 次回A-06: この性質が「もっともらしい間違い」を生む理由を分類する
- 関連資料: AIモデル・AIツール比較マップ/AI開発ツール比較表