依頼の前に「何を作るか」を決める

A-07では、AIへ渡す情報7種類を整理し、依頼文の書き方を型にしました。ただし、どれほど良い依頼文を書けても、そもそも「何を作るか」が決まっていなければ、依頼のしようがありません。この講義が扱うのは、依頼よりもさらに前の工程です。つまり、作るものの中身を決める段階です。ここで決めるべきことは、全部で8項目あります。
このスライドのポイント
- A-07で学んだのは「AIへ渡す情報7種類」=依頼の書き方
- この講義は依頼より前の工程=「何を作るか」を決める段階
- 良い依頼文が書けても、作るものの中身が未定なら依頼のしようがない
- 決めるべきは8項目
生成前に決める8項目と、新しい3語

まず、この講義で使う新しい用語を3つ定義します。権限とは、誰がどのデータや機能まで使えるかの範囲です。公開範囲とは、作ったものを誰がアクセスできる場所に置くか、つまり自分だけ・社内・全世界のどれにするかということです。例外とは、入力ミスや通信の失敗といった正常でない事態が起きたときに、どう振る舞うかの決め事です。この3つを含め、生成前に決める8項目は、利用者・解決課題・入力・出力・保存データ・権限・例外・公開範囲です。
このスライドのポイント
- 権限: 誰がどのデータ・機能まで使えるかの範囲
- 公開範囲: 誰がアクセスできる場所に置くか(自分だけ・社内・全世界)
- 例外: 正常でない事態(入力ミス・通信失敗等)にどう振る舞うか
- 8項目: 利用者・解決課題・入力・出力・保存データ・権限・例外・公開範囲
先に決めないと何に失敗するか

なぜ先に決めるのかを説明します。8項目を決めずに作り始めると、作りながら仕様を決めることになります。特に保存データや権限は、後から変えようとすると影響範囲が広く、修正のコストが大きくなります。中でも権限と公開範囲の決め忘れは、本来見えてはいけない人にデータが見えてしまう、といった安全性の事故に直結します。だからこそ、手を動かす前に、紙の上で決めきってしまうのが得策です。
このスライドのポイント
- 決めずに作ると「作りながら仕様を決める」ことになる
- 保存データ・権限は後から変えると影響範囲が広く修正コストが大きい
- 権限・公開範囲の決め忘れは安全性の事故に直結する
8項目は「価値の4つ」と「安全の4つ」

8項目の構造を図で押さえます。8項目は、その性質で2つのグループに分かれます。前半の利用者・解決課題・入力・出力の4つは、このアプリが誰に何の価値を届けるかを決める項目です。後半の保存データ・権限・例外・公開範囲の4つは、安全に動かすために決める項目です。前半だけを決めて作り始めると、動くけれど危ないアプリになりがちです。前半と後半、両方をセットで埋める意識を持ってください。
このスライドのポイント
- 前半4つ(利用者・解決課題・入力・出力)=価値を決める項目
- 後半4つ(保存データ・権限・例外・公開範囲)=安全を決める項目
- 前半だけで着手すると「動くが危ない」アプリになりがち
- 両方をセットで埋める
具体例: 経費メモアプリを8項目で埋める

具体例で見ます。経費メモアプリを8項目で埋めてみます。利用者は自分と経理担当、解決課題はレシートの転記が面倒なこと、入力は金額・日付・写真、出力は月別の一覧です。保存データは明細と画像、権限は本人が自分の分だけ、経理は全員分を閲覧できる形とします。例外は写真がなくても保存できること、公開範囲は社内のみです。こうして並べると、作る前に決めるべきことが、とても具体的に見えてきます。
技術サンプル: 8項目の要件メモをJSONにする

サンプルを見ます。いま埋めた8項目を、そのままJSON形式のメモにしたものです。種別はjson、目的は、要件をAIへ渡せる形にして抜けを見えるようにすることです。読み方の要点は2つあります。1つは、JSONという構造にすると、AIへそのまま貼って渡せて、埋まっていない項目が一目で分かることです。もう1つは、権限が役割ごとに書かれている点です。AIへの質問例は「この要件で作る場合、最初に作るべき最小構成を提案してください」です。
このスライドのポイント
- 種別: json
- 目的: 埋めた8項目をAIへそのまま渡せる形にし、抜けを見えるようにする
- サンプル本体:
混同しやすい: 「入力」と「保存データ」

混同しやすい組を1つ整理します。入力と保存データです。入力は画面で受け取るもの、保存データは残しておくものです。この2つは重なりそうで、実際にはずれます。入力しても保存しない項目、たとえば確認用の一時的な数値があります。逆に、入力せず自動で保存される項目、たとえば登録した日時もあります。両者を分けて考えると、どのデータを本当に残すのかが、はっきり決まります。
バイブコーディングでの確認点

バイブコーディングでの確認点です。AIへ生成を頼む前に、8項目がすべて埋まっているかを自分で確認してください。とくに権限・公開範囲・例外の3つは要注意です。というのも、AIはこれらの指定がないと、最も緩い設定、たとえば誰でも全データを見られる形で作ってしまいがちだからです。安全に関わる項目は、AI任せにせず必ず人間が指定する。これを習慣にしてください。
このスライドのポイント
- 生成を頼む前に、8項目がすべて埋まっているかを確認
- 特に権限・公開範囲・例外は要注意
- AIは指定がないと「最も緩い設定」で作りがち
- 安全に関わる項目は人間が必ず指定する
まとめと次への橋渡し

最後に一問一答です。生成前に決める8項目のうち、安全性へ直結する2つはどれでしょうか。(間)答えは、権限と公開範囲です。30秒まとめです。コードを作らせる前に、価値の4項目と安全の4項目、合わせて8項目を埋める。特に権限・公開範囲・例外は人間が指定する、でした。次回は、変更をAIに任せてよいか危険かの線引きを扱います。関連資料は「AIでアプリを作る前に決める10項目」「AIアプリ要件定義シート」「業務整理質問集100」です。
このスライドのポイント
- 一問一答: 8項目のうち、安全性へ直結する2つは? → 権限と公開範囲
- 30秒まとめ: 価値の4項目+安全の4項目=8項目を、生成前に埋める。権限・公開範囲・例外は人間が指定
- 次回: 変更をAIに任せてよいか、危険かの線引き
- 関連資料: 「AIでアプリを作る前に決める10項目」「AIアプリ要件定義シート」「業務整理質問集100」