前回の続き——危険な変更はどこにあるか

前回の続き——危険な変更はどこにあるか

前回のA-08では、コード生成より先に決める8項目を確認し、その中でも権限と公開範囲が安全性へ直結するとお伝えしました。この講義は、その権限・公開範囲まわりの変更こそが、これから扱う危険な変更の中心だという話から始まります。同じ「直して」という一言でも、変更の中身によって、失敗したときの被害はまったく違います。その違いを、リスクレベルという物差しで整理していきます。

このスライドのポイント

  • A-08で決めた8項目のうち、権限・公開範囲が安全性へ直結した
  • その権限・公開範囲まわりの変更が、ここで言う危険な変更の中心
  • 同じ「直して」でも、変更の中身で失敗時の被害は大きく変わる

リスクレベルとは

リスクレベルとは

リスクレベルとは、変更が失敗したときの影響の大きさと、元に戻しにくさの区分です。低リスクは見た目や文言の変更で、影響は画面の中にとどまり、すぐ戻せます。中リスクは機能や部品の追加で、動作に影響し、戻すには手順が要ります。高リスクは、認証、課金、データベースの構造変更や削除、権限、そして本番環境に関わる変更で、利用者のデータやお金に影響し、戻せないことがあります。ここでいう本番環境とは、実際の利用者が使っている環境のことです。

このスライドのポイント

  • リスクレベル: 変更が失敗したときの影響の大きさと、戻しにくさの区分
  • 低: 見た目・文言(影響は画面内・すぐ戻せる)
  • 中: 機能追加・部品の追加(動作に影響・戻すのに手順が要る)
  • 高: 認証・課金・DBの構造や削除・権限・本番環境(データやお金に影響・戻せないことがある)
  • 本番環境: 実際の利用者が使っている環境

なぜリスクで分けるのか

なぜリスクで分けるのか

この区分を持たないと、ボタンの色を直すのと同じ気軽さでログイン処理を変えさせてしまい、結果として全員がアプリに入れなくなる、といった事故が起きます。特にデータの削除は、元に戻せない変更の代表です。一度消えた利用者の情報や、外部へ漏れてしまった情報は、コードのように履歴から戻すことができません。だからこそ、変更に手をつける前に、それがどのリスクレベルかを見分ける必要があります。

このスライドのポイント

  • 区分がないと、ボタン色の修正と同じ気軽さでログイン処理を変えさせてしまう
  • 結果、全員がアプリに入れなくなる事故が起きうる
  • データの削除は「元に戻せない」変更の代表

リスク表で全体をつかむ

リスク表で全体をつかむ

全体像を、低・中・高の3段のリスク表で捉えます。表には、リスクレベルごとに、変更の例、失敗したときに起きること、人間がやること、の3列を並べます。低リスクは任せてよい範囲、中リスクは差分を確かめてから進める範囲、高リスクは必ず立ち止まる範囲です。高リスクの行だけは特に目立たせ、実行の前に人間が判断を入れる場所だと分かるようにしておきます。

このスライドのポイント

  • 低・中・高の3段リスク表で捉える
  • 列は「変更の例/失敗したときに起きること/人間がやること」の3つ
  • 低=任せてよい、中=差分を確かめてから、高=必ず立ち止まる
  • 高リスクの行は緑帯で強調

同じ「直して」でも扱いが変わる

同じ「直して」でも扱いが変わる

同じ「直して」という依頼でも、中身で扱いが変わります。1つ目、ボタンの文言を変える。これは低リスクなので、そのまま任せてよい変更です。2つ目、ログインの方法を変える。これは高リスクなので、変更前に、どこがどう変わるのかの差分説明と、元へ戻す方法を確認します。3つ目、不要になったデータを削除する。これは戻せない可能性があるため、実行の前に、バックアップがあるかどうかを人間が確かめます。同じ言葉でも、立ち止まる場所が違うことが分かります。

このスライドのポイント

  • (a) ボタンの文言変更 → 低リスク。そのまま任せてよい
  • (b) ログイン方法の変更 → 高リスク。変更前に差分説明と戻し方を確認
  • (c) 不要データの削除 → 変更前にバックアップの有無を人間が確認
  • 同じ言葉でも、止まる場所が違う

技術サンプルカード:高リスク変更前の確認質問

技術サンプルカード:高リスク変更前の確認質問

スライド7では、高リスクな変更を任せる前に、AIへ投げかける確認の質問セットを用意します。3つの質問は、いずれも変更を実行する前に聞くものです。1つ目で影響範囲を、2つ目で戻し方を、3つ目で本番のデータに触れるかどうかを確かめます。ここで大切な注意点があります。削除や本番反映は、AIの回答だけで実行してはいけません。バックアップがあるかどうかの確認は、人間が自分の目で行ってください。

元に戻せる変更・元に戻せない変更

元に戻せる変更・元に戻せない変更

混同しやすいのは、元に戻せる変更と、元に戻せない変更の違いです。コードの変更は、変更の履歴が残っていれば、後から前の状態へ戻せることが多いものです。一方で、削除されてしまったデータや、外部へ漏れてしまった情報は、戻すことができません。この戻せない側は、影響の大小にかかわらず、常に高リスクとして扱います。戻せるかどうかが、慎重さを決める分かれ目になります。

バイブコーディングでの確認点

バイブコーディングでの確認点

バイブコーディングでの確認点です。AIの提案の中に、認証、課金、削除、権限、本番、といった言葉が出てきたら、そこで一段立ち止まってください。これらは高リスクの合図です。そして、たとえ低リスクの変更であっても、A-04で身につけた差分確認は省きません。何を変え、何を変えていないかを毎回確かめる習慣が、事故を最も減らします。

このスライドのポイント

  • AIの提案に「認証・課金・削除・権限・本番」の語が出たら一段止まる
  • それらは高リスクの合図
  • 低リスクでも、A-04の差分確認は省かない

一問一答とまとめ

一問一答とまとめ

最後に一問一答です。ボタンの色を変えることと、ログイン処理を変えること。先に慎重な確認をすべきなのは、どちらでしょうか。(間)答えは、ログイン処理の変更です。高リスクで、失敗すると全員がアプリを使えなくなり、戻すことも難しいためです。30秒でまとめます。変更は低・中・高のリスクレベルで見分け、高リスクは実行の前に必ず立ち止まる。戻せない変更は、常に高リスクとして扱う。これがこの講義の芯です。次回はカテゴリAの締めくくりとして、この先200講義の学習地図をお渡しします。関連資料は「AIアプリのセキュリティ超入門」「AIアプリ公開前チェックリスト100」「個人情報を扱うAIアプリ注意点」です。

このスライドのポイント

  • 一問一答: ボタンの色変更とログイン処理の変更、先に慎重確認すべきは? → ログイン処理の変更
  • 30秒まとめ: 変更はリスクで見分け、高リスクは実行前に立ち止まる。戻せない変更は常に高リスク
  • 次回: カテゴリAの締めくくり、200講義の学習地図
  • 関連資料: 「AIアプリのセキュリティ超入門」「AIアプリ公開前チェックリスト100」「個人情報を扱うAIアプリ注意点」