Step 3までで「作る技術」は揃った。次は「作る前」

カテゴリLまでで、フロントエンド・サーバー・API・データベースといった「作る技術」が一通り揃いました。ここからのStep 4は、その技術を使って「何を作るか」を決める、作る前の工程です。技術があるほど、本当は作らなくてよいものまで作れてしまいます。だからこそ、作り始める前に立ち止まって考える上流工程が必要になります。この講義は、その上流の入口として、企画と要件定義という2つの活動の違いを整理します。
このスライドのポイント
- カテゴリLまでで、フロントエンド・サーバー・API・データベースなど「作る技術」が揃った
- Step 4は「何を作るか」を決める、作る前の工程
- 技術があるほど、作らなくてよいものまで作れてしまう
- だから作り始める前に立ち止まる上流工程が要る
定義: 企画と要件定義

企画とは、何を作る価値があるかを考える活動です。誰の・何の課題を・なぜ今解くのか、という価値の問いに答えます。要件定義とは、作ると決めたものについて、その対象と条件を明文化する活動です。何ができれば完成か、という仕様の問いに答えます。A-08で見た「生成前に決める8項目」は、まさにこの要件定義の入口にあたり、そこで整理した利用者や入力・出力が、要件の材料になります。
このスライドのポイント
- 企画=何を作る価値があるかを考える活動(誰の・何の課題を・なぜ今解くのか)
- 要件定義=作ると決めたものの対象と条件を明文化する活動(何ができれば完成か)
- 企画は「価値の問い」、要件定義は「仕様の問い」に答える
- A-08の「生成前に決める8項目」は要件定義の入口
なぜ分ける必要があるか

この2つを分けないと、価値の検討を飛ばして、いきなり仕様の話に入ってしまいます。「何を作るか」だけを決めて「なぜ作るか」が抜けた状態です。これは、完成したのに使われないアプリが生まれる、最大の原因です。せっかく動くものを作っても、解くべき課題とずれていれば、労力は無駄になります。バイブコーディングで作る速度が上がったいまこそ、作る前に価値を問う一手間が、その無駄を防いでくれます。
このスライドのポイント
- 分けないと、価値の検討を飛ばして、いきなり仕様の話に入ってしまう
- 「何を作るか」だけ決めて「なぜ作るか」が抜ける
- これが「完成したのに使われないアプリ」の最大の原因
- 作る速度が上がったいまこそ、作る前に価値を問う一手間が効く
構造: 2段の問いには順序がある

企画と要件定義には順序があります。まず企画で「そもそも作るべきか」を問い、作ると決まって初めて、要件定義で「何ができれば完成か」を問います。この順序が逆転すると、作ってから価値がないと気づくことになり、手戻りが大きくなります。図では、上段に企画の問い、下段に要件定義の問いを置き、上から下へ一方向に進む流れとして捉えてください。矢印を逆にたどらないことが、上流工程の基本姿勢です。
このスライドのポイント
- 企画の問い「作るべきか?」→ Yes →要件定義の問い「何ができれば完成か?」
- 順序が逆転すると、作ってから価値がないと気づき、手戻りが大きい
- 上段=企画、下段=要件定義。上から下へ一方向に進む
具体例: 経費精算アプリで問いを分ける

経費精算をアプリ化したい、という相談を例にします。企画の問いは、今のやり方の何が、誰にとって、どれだけ困るのか、です。一方、要件定義の問いは、何を入力でき、何が出力されれば完成か、です。同じ「経費精算アプリ」というテーマでも、問いの中身はまったく違います。企画の答えが曖昧なまま要件に進むと、機能はそろっているのに誰も使わないアプリになりがちです。まず企画の問いに答えてから、要件の問いへ進みましょう。
このスライドのポイント
- 題材:「経費精算をアプリ化したい」
- 企画の問い: 今のやり方の何が・誰にとって・どれだけ困るのか
- 要件の問い: 何を入力でき、何が出力されれば完成か
- 同じテーマでも、企画の問いと要件の問いは中身が違う
技術サンプルカード(table)

スライドの対比表を見てください。企画と要件定義を、問い・成果物・失敗の形の3点で並べています。読み方のポイントは、企画の成果物が「作る理由の合意」であるのに対し、要件定義の成果物は「完成の条件の一覧」である点です。AIへの質問例はこうです。「この依頼内容を、企画レベルの問いと要件レベルの問いに分けて、まだ答えが無いものを列挙してください」。分ける作業そのものを、AIに手伝ってもらえます。
混同: 「作れるか」と「作るべきか」

混同しやすいのが、「作れるか」と「作るべきか」という2つの問いです。作れるかは技術の問いで、カテゴリAからLまでで答えられるようにしてきました。作るべきかは、企画の問いです。技術的に作れることと、作る価値があることは、別の話です。作れるからといって作ってよいとは限らない、という視点が、上流工程の出発点になります。この講義以降のカテゴリMは、後者の問いに答える力を育てます。
このスライドのポイント
- 作れるか=技術の問い(カテゴリA〜Lで答えられるようにした)
- 作るべきか=企画の問い(別の問い)
- 技術的に作れることと、作る価値があることは別の話
- 作れるからといって作ってよいとは限らない
バイブコーディングでの確認点

確認点です。AIに開発を依頼する前に、「この企画の答え、つまり誰の何の課題を解くのかを、1文で言えるか」を自分に問いましょう。言えないなら、それはまだ企画が固まっていないサインなので、作り始めません。AIは要件を渡せばすぐ作り始めてしまいますが、その中身に価値があるかどうかまでは判断してくれません。価値の判断は、A-04で見たとおり、最後まで人間が持ち続ける仕事です。
このスライドのポイント
- AIに開発を依頼する前に「企画の答え(誰の何の課題か)を1文で言えるか」を自分に問う
- 言えなければ、まだ企画が固まっていないサイン。作り始めない
- AIは要件を渡せば作り始めるが、価値があるかは判断してくれない
- 価値の判断は、A-04で見たとおり人間が最後まで持つ仕事
一問一答とまとめ

一問一答です。「何ができれば完成かを明文化する活動は何でしょうか」。……答えは、要件定義です。価値を考えるのが企画、完成の条件を決めるのが要件定義でした。30秒まとめとして、作る前にはまず企画で「作るべきか」を問い、次に要件定義で「何ができれば完成か」を問う、この順序を覚えてください。次回は、利用者の要望の奥にある課題の見つけ方を扱います。関連資料は「AIでアプリを作る前に決める10項目」と「MVP設計テンプレート」です。
このスライドのポイント
- 一問一答:「『何ができれば完成か』を明文化する活動は?」→ 答: 要件定義(価値を考えるのが企画)
- 30秒まとめ: まず企画で「作るべきか」、次に要件定義で「何ができれば完成か」を問う
- 次回: 要望の奥にある課題の見つけ方へ
- 関連資料:「AIでアプリを作る前に決める10項目」「MVP設計テンプレート」