前回との接続と、この講義の役割

前回との接続と、この講義の役割

前回のM-03では、誰が・どの状況で・何を達成したいかという3点で対象ユーザーを記述しました。相手が定まると、次に見るべきは、その人が今おこなっている仕事の中身です。この講義は、その仕事を分解して理解する工程を扱います。作りたいものの輪郭を、利用者から業務へと一段深めていく回だと考えてください。

このスライドのポイント

  • M-03では「誰が・どの状況で・何を達成したいか」の3点で対象ユーザーを記述した
  • 相手が定まったら、次はその人が今おこなっている仕事の中身を見る
  • この講義は、その仕事を分解して理解する工程を扱う

業務分解とは何か

業務分解とは何か

業務分解とは、今のやり方を7つの要素、すなわち担当者・入力情報・手順・判断・出力・例外・引き継ぎに分けて記述することです。担当者は誰が関わるか、入力情報は何を受け取って始まるか、手順はどの順で進むか、判断はどこで人が決めるか、出力は何が生まれるかを表します。残る2つ、例外は正常でない事態、引き継ぎは誰へいつ渡すかです。アプリ化とは、この分解結果を部品へ写し取る作業だと考えてください。判断はサーバー側の処理へ、入力は画面の入力欄へ、出力は一覧や帳票へと対応していきます。

このスライドのポイント

  • 業務分解=今のやり方を7要素に分けて記述すること
  • 7要素: 担当者/入力情報/手順/判断/出力/例外/引き継ぎ
  • アプリ化とは、この分解結果を部品へ写し取る作業

なぜ業務分解が必要か

なぜ業務分解が必要か

この分解を飛ばすと、「なんとなく今の業務をアプリに」となり、正常なルートだけを写して例外がこぼれます。差し戻し、代理申請、月末の駆け込みといった場面が、まるごと抜け落ちるのです。これは、現場で使えないアプリが生まれる典型的な入り方です。7つの要素で先に棚卸ししておくことが、後戻りを防ぐ最初の一歩になります。埋めておいた表は、そのまま後の工程の材料にもなります。

このスライドのポイント

  • 分解を飛ばすと「なんとなく今の業務をアプリに」となる
  • 正常なルートだけを写し、例外(差し戻し・代理申請・月末の駆け込み)がこぼれる
  • 現場で使えないアプリが生まれる典型的な入り方

7要素の分解表と、落とし穴

7要素の分解表と、落とし穴

7つの要素を1枚の表に並べると、業務の全体像が見えてきます。ここで最も注意したいのが、例外と引き継ぎの2つです。人は自分の仕事を説明するとき、うまくいく正常なルートだけを語りがちで、例外と引き継ぎは聞かないと出てこないのです。ですからこの2つの欄は、意識して問いを重ねないと、空のまま残ります。分解表の例外欄が空であれば、まだ分解できていないと考えてください。

このスライドのポイント

  • 7要素を1枚の表に並べると業務の全体像が見える
  • 落とし穴は「例外」と「引き継ぎ」の2欄
  • 人は正常ルートしか説明しない——例外と引き継ぎは聞かないと出てこない
  • 例外欄が空なら、まだ分解できていない

紙の経費精算を分解してみる

紙の経費精算を分解してみる

紙でおこなう経費精算を例に分解してみます。担当者は、申請者から上長、そして経理へと渡っていきます。入力情報はレシートで、判断としては1万円を超えると承認者が変わる、いわゆる1万円ルールがあります。例外は、レシートを紛失した場合や、出張中に別の人が代理で申請する場合です。引き継ぎは、月末の締めで経理へ一括して渡す流れになります。この例外の行が、A-08で決めた「例外」や、後の講義で扱う画面の状態設計の材料になっていきます。

このスライドのポイント

  • 担当者: 申請者→上長→経理
  • 入力: レシート、判断: 1万円ルール(1万円超で承認者が変わる)
  • 例外: レシート紛失、出張中の代理申請
  • 引き継ぎ: 月末締めで経理へ一括
  • 例外の行が、A-08の「例外」やその後の状態設計の材料になる

技術サンプルカード: 業務分解表

技術サンプルカード: 業務分解表

こちらが業務分解表の記入例です。種別は表、目的は現行業務を7要素で棚卸しすることです。読み方の要点は、右端の記入例が具体的な事実で埋まっているか、そして例外と引き継ぎの欄まで埋まっているかの2点です。この表はそのまま、次の講義で機能要件を書くときの材料になります。AIへの質問例は、この分解表を埋めるための質問リストを作ってもらい、特に例外と引き継ぎを掘る質問を多めに出してもらうことです。

混同しやすい概念: 正常ルートと全体

混同しやすい概念: 正常ルートと全体

混同しやすいのは、業務の正常ルートと、業務の全体です。正常ルートは、担当者が口で説明してくれる、うまくいく道筋のことです。一方の全体は、例外まで含んだ実際の姿で、これは観察と質問を重ねて初めて掘り出せます。説明されたことだけを写すと正常ルートの写経になり、現実とずれます。繰り返しになりますが、分解表の例外欄が空なら、まだ全体は捉えられていません。

このスライドのポイント

  • 正常ルート=担当者が口で説明してくれる、うまくいく道筋
  • 全体=例外まで含んだ実際の姿。観察と質問で掘る
  • 説明されたことだけ写すと「正常ルートの写経」になり現実とずれる

バイブコーディングでの確認点

バイブコーディングでの確認点

バイブコーディングで確認したいのは、アプリ化に入る前に7要素の表を埋め、それをAIへ渡すことです。これはA-07で学んだ、渡す情報のうちの「現状」を、業務の形にしたものだと考えてください。埋まらない欄があれば、それがそのまま、現場へ確かめるべき事項になります。空欄を残したまま作り始めないことが、後の手戻りを大きく減らします。

このスライドのポイント

  • アプリ化に入る前に7要素の表を埋め、AIへ渡す
  • これはA-07で学んだ「渡す情報=現状」の業務版
  • 埋まらない欄が、現場へ確かめるべき事項
  • 質問例:「この業務の分解表で、例外と引き継ぎを掘る質問を作ってください」

まとめと次回

まとめと次回

最後に一問一答です。業務分解で人が説明し忘れがちな2つの要素は、何でしょうか。少し考えてみてください。答えは、例外と引き継ぎです。30秒でまとめます。業務分解は、今のやり方を7要素に分けて記述することで、鍵になるのは、正常ルートだけでなく例外と引き継ぎまで掘り出すことでした。次回のM-05では、この分解結果を要件の言葉に翻訳する機能要件へ進みます。関連資料は、「業務整理質問集100」と「自分の業務をアプリ化するワークブック」です。

このスライドのポイント

  • 一問一答:「業務分解で人が説明し忘れがちな2要素は?」→ 例外と引き継ぎ
  • 30秒まとめ: 業務分解=今のやり方を7要素に分けて記述。鍵は例外と引き継ぎを掘ること
  • 次回 M-05: 分解結果を要件の言葉にする「機能要件」へ
  • 関連資料: 「業務整理質問集100」「自分の業務をアプリ化するワークブック」