前回との接続——課題が見えたら、次は「誰のため」

前回のM-02では、利用者の要望の奥にある課題へ遡る見方を学びました。課題が見えてきたら、次に決めるのは「その課題を、誰のために解くのか」です。同じ経費精算アプリでも、使う人が違えば、必要な画面も操作もまるで変わります。この講義では、対象ユーザーを曖昧なままにせず、具体的な人物像として描く方法を扱います。
このスライドのポイント
- M-02では、利用者の要望の奥にある課題へ遡る見方を学んだ
- 課題が見えたら、次に決めるのは「その課題を、誰のために解くのか」
- 同じ経費精算アプリでも、使う人が変われば必要な画面も操作も変わる
- この講義の役割: 対象ユーザーを曖昧なままにせず、具体的な人物像として描く
対象ユーザーと利用文脈の定義

対象ユーザーとは、そのアプリを実際に使う具体的な人のことで、役割・使う頻度・操作の習熟度まで含めて捉えます。利用文脈とは、その人が使う状況のことで、いつ、どこで、何をしながら、急いでいるか、といった条件を指します。A-08では「利用者」を、作る前に決める8項目の1つとして挙げました。ここでは、その1項目を立体的に広げていきます。誰がどんな状況で使うかまで描いて、初めて設計の判断材料になるのです。
このスライドのポイント
- 対象ユーザー = そのアプリを実際に使う具体的な人(役割・使う頻度・操作の習熟度)
- 利用文脈 = その人が使う状況(いつ・どこで・何をしながら・急いでいるか)
- A-08の8項目にあった「利用者」を、1項目から立体的に広げたもの
- 誰がどんな状況で使うかまで描いて、初めて設計の判断材料になる
なぜ必要か——「全員向け」は誰にも最適でない

対象ユーザーを決めないと、「全社員向け」のような特定できない想定で作ることになり、結局は誰にとっても最適でないアプリになります。経費精算アプリでも、申請する人と確認する経理担当では、見たい画面がまるで違います。申請者はすばやく入力を終えたい一方で、経理は漏れなく点検したい、という具合です。想定する人がぼやけたまま作り始めると、後から画面ごと作り直す大きな手戻りが生まれてしまいます。
このスライドのポイント
- 対象ユーザーを決めないと、「全社員向け」のような特定できない想定で作ることになる
- 特定できない想定で作ると、結局は誰にとっても最適でないアプリになる
- 経費精算アプリでも、申請者と経理担当では見たい画面がまるで違う
- 想定がぼやけたまま作り始めると、後から画面ごと作り直す手戻りが生まれる
構造——対象ユーザーを描く3点セット

対象ユーザーは、3つの点で記述すると抜けなく描けます。1つ目は「誰が」で、役割と使う頻度を書きます。2つ目は「どの状況で」で、場所と時間、そして使う端末を書きます。3つ目は「何を達成したいか」で、その人の目的と、うまくいった状態を書きます。この3点セットが埋まると、その人にとっての成功がはっきりと言葉になります。逆に、どこか一つでも空いていれば、まだ人物像がぼやけているというサインです。
このスライドのポイント
- 対象ユーザーは3つの点で記述すると抜けなく描ける
具体例——経費アプリの2ユーザーを対比する

経費精算アプリを、2人の対象ユーザーで考えてみます。1人目は申請者で、経費を出すのは月に数回、外出先や移動中にスマホを使い、さっと申請を済ませて忘れたいと考えています。2人目は経理担当で、毎日デスクのパソコンで作業し、申請に漏れがないか確認して締めたいと考えています。同じアプリでも、この2人が最初に見たい画面はまったく別物です。どちらを設計の基準にするかで、優先して作る画面が変わってきます。
このスライドのポイント
- 申請者: 経費を出すのは月に数回、外出先や移動中にスマホを使う、さっと申請して忘れたい
- 経理担当: 毎日デスクのパソコンで作業、申請の漏れなく確認して締めたい
- 同じアプリでも、この2人が最初に見たい画面はまったく別物
- どちらを設計の基準にするかで、優先する画面が変わる
技術サンプルカード——2ユーザーの3点セット記入例

対象ユーザーの3点セットは、表の形にしておくと扱いやすくなります。申請者と経理担当を左右に並べ、誰が、どの状況で、何を達成したいか、の3行で書き分けます。この表は書いて終わりではありません。後で学ぶ画面設計や、この章の最後で扱う優先順位の判断は、この表を入力として組み立てられます。AIに「対象ユーザーを3点セットで記述してください。想定が曖昧な箇所を指摘してください」と頼めば、まだ埋め切れていない欄を見つける手伝いをしてくれます。
このスライドのポイント
- 種別: table
- 目的: 対象ユーザーを3点セットで記述し、想定の曖昧な箇所を洗い出す
混同しやすい概念——「使う可能性のある人」と「基準にする人」

混同しやすいのが、「使う可能性のある人」と「設計の基準にする人」です。前者はアプリに触れうる全員で、後者は設計の中心に据える主要なユーザーです。使う可能性のある人は広く見積もってかまいませんが、設計の基準は主要ユーザーに絞る、と分けて考えます。全員を等しく満足させようとする設計は、あれもこれもと欲張った結果、結局は誰も満足させないアプリになりがちです。
バイブコーディングでの確認点——依頼文に3点セットを含める

確認点は、AIへ開発を依頼する前に、対象ユーザーの3点セットを依頼文へ含めることです。A-07で学んだ依頼の「目的」の中に、誰がどんな状況で使うかを書き込みます。AIから「誰向けですか」と聞かれる前に、こちらから渡すのが理想です。判断に迷うときは、AIに「この経費精算アプリの主要ユーザーを1人に絞るなら誰にすべきか、理由と一緒に提案してください」と聞くと、基準づくりの助けになります。
このスライドのポイント
- AIへ開発を依頼する前に、対象ユーザーの3点セットを依頼文へ含める
- A-07で学んだ依頼の「目的」の中に、誰がどんな状況で使うかを書き込む
- AIから「誰向けですか」と聞かれる前に、こちらから渡すのが理想
- AIへの質問例: 「この経費精算アプリの主要ユーザーを1人に絞るなら誰にすべきか、理由と一緒に提案してください」
一問一答とまとめ

最後に一問一答です。ユーザー記述の3つの点とは何でしょうか。少し考えてみてください。答えは、誰が、どの状況で、何を達成したいか、の3つです。30秒のまとめです。対象ユーザーと利用文脈を3点セットで描くと、「全員向け」の曖昧さを避けられ、設計の基準になる人物像がはっきりします。次回のM-04では、その人が今おこなっている仕事そのものを分解していきます。関連資料は「業務整理質問集100」と「自分の業務をアプリ化するワークブック」です。
このスライドのポイント
- 一問一答: ユーザー記述の3点は何か
- 答え: 誰が・どの状況で・何を達成したいか
- 30秒まとめ: 対象ユーザーと利用文脈を3点セットで描くと、「全員向け」の曖昧さを避けられる
- 次回M-04: その人が今おこなっている仕事そのものを分解する
- 関連資料: 「業務整理質問集100」「自分の業務をアプリ化するワークブック」